1992(平成4)年5月24日 

 

1992(平成4)年5月24日

歌舞伎座 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部 

3階B席 をー2

(一、坂崎出羽と千姫

二、藤娘

三、河竹黙阿弥歿後百年記念 皐月闇宇津谷峠

 

二、藤娘 

藤の精:梅幸

 

場内真っ暗で長唄だけ流れる幕開け、そして

パッと明るくなって、梅幸がそこにいる。

この演出には驚いた。

梅幸のかわいらしさ、品の良さ、華やかさを堪能。

引き抜きもあって、“小道成寺”といっていいのか。

着物の裾を酒のとっくりに例えての振りは面白かった。

 

三、河竹黙阿弥歿後百年記念 皐月闇宇津谷峠

提婆の仁三、文弥:菊五郎 伊丹屋十兵衛:團十郎ほか

 

 黙阿弥ならではのカネ・ゆすり・殺し・因果とテンポよく

展開していく。結構スピーディで息もつかせず面白かった。

 江戸っ子熊・弥次馬の喜多・消炭の亀・どんどろ坂の勘太郎

口入婆お百・竹の塚兵蔵など人物名のおかしさ、文弥の母が

現れる因果の怖さ、相部屋で地方の人間が出てくるくだりや

当時の宿の様子など興味深く観れた。鞠子宿のとろろも食べに

行ったことがあるのでワクワクした。

 菊五郎の二役は、仁三は見逃され去っていく所作やゆすりの

場など良く、文弥は優しさあってかわいそうな雰囲気。性根が

しっかりしている。團十郎の十兵衛は真面目な人柄が出て、

仕方なしに文弥を殺し、のちに悩まされる姿は辛く伝わる。

わずかな出ながら、團蔵松助、友右衛門、十蔵、右之助、

秀調、亀蔵、由次郎、鶴蔵とぜいたくに使っている。藤十郎

しづは哀れで文弥の霊がのりうつるところは怖い。菊蔵の文弥の

母も因果で怖い。團菊祭とあって、二人の共演を観ないと気が

治まらない。

 

(所感)

 お歳重ねられた梅幸の藤娘が観られたのは貴重である。

 宇津谷峠は勘三郎三津五郎で観たかった。ここにある

藤十郎澤村藤十郎である。この時は菊蔵も鶴蔵も元気だった

のだなあと、他メンバーと共に菊五郎劇団の雰囲気を知る。

 團十郎菊五郎の共演はやはり團菊祭と銘打っての楽しみ

ながら、九代目團十郎と五代目菊五郎の追善であるので、

共演も楽しみにしながらも、二人の先人名優を偲ぶ意味で

双方の家の芸を楽しむことものちのちわかってくる。

2020.5.6