平成2年10月21日

芸術祭十月大歌舞伎 夜の部 一幕見席にて


一.十六夜清心


清心(後に清吉)…孝夫
十六夜(後におさよ)…玉三郎
白蓮実は正兵衛…左団次
お藤…秀太郎 ほか


稲瀬川百本杭から百本杭川下までを、ビデオで、
団十郎の清心、菊五郎十六夜権十郎の白蓮の
トリオで見たことがあったが、今回の孝玉コンビの
方が息が合って良かった。団菊コンビはちょっと
堅い気がする。
孝玉コンビは、孝夫の愛嬌と玉三郎の色気が漂い
魅力的である。また、このコンビは以前から
知られた名コンビなので実際見たかった。
孝夫はビデオの身替座禅のイメージが強いため、
格好いい立役見ると妙だったが、これからは
見慣れていくだろう。
玉三郎は正統的な役柄の中で、このような汚れ役を
見ると愛嬌があって、コミカルな演技もできるんだ
なぁと思った。
左団次は相変わらず憎めない悪役。イメージが定着
しつつあるが、この人がいるから引き立つ感じの
芝居だった。
通しだったが、清心と十六夜の再会シーンがなく、
舞台構成の問題があり残念だった。
このストーリーのテーマは”縁”。
縁が腐れ縁だったり、赤い糸のような縁、偶然の縁、
悲劇の縁と、この芝居が様々な縁=絆が登場する。
”縁"は”金"と同じで「まわりもの」と思っているが、
こういった縁をめぐる展開が続く芝居を見ると、
”縁"って不思議なものであるし、まさに次から
次へと回ってくるものと思ってしまう。


二.男女道成寺


白拍子花子…玉三郎
白拍子桜子実は狂言師左近…孝夫
所化…家橘、秀調、亀鶴、仲蔵、男寅、由次郎、亀蔵


踊りは興味ないのだが、白拍子の一人が実は狂言師
あったり、花子の衣装の変化、所化たちのコミカルな
動きなど展開が激しい。このような舞踊は見ていて
飽きない。各々の踊りが何を表現しているのかが
わかればもっと楽しめると思うのだが…
孝夫は演技のほかにも舞踊でも愛嬌があり、鞠をついて
調子をとるところは印象的だった。
玉三郎はずーっと無言で彼なりの艶姿をふりまいていた。
所化を演じている人たちも一人一人個性的で面白かった。
中でも、居眠りしてコックリコックリしている所化、
多分男寅だと思うが、彼が孝夫に鞠と勘違いされて
呼び出されてしまうところなど良かった。



(回顧)


孝玉コンビを初めて見た…人気公演か結局一幕見通し。
孝夫さん(現仁左衛門さん)に玉三郎さんをまともに
見たのはこれが初めてだったと思う。
この頃、左団次さんの印象が固定しつつある感じ。
昼は猿之助一座の「金幣猿島郡」で、大詰で「双面
道成寺」が出て、昼夜共に道成寺物の上演が続いたのも
覚えている。


「縁」の講釈は良く書けているなあって我ながら関心。
しかし、「縁」は回りものでもあるが、掴むもので
あると思うが…


ほとんどの役者が御園座顔見世に行き、後述するが、
国立は菊五郎劇団で、歌舞伎座は小一座になった感じ。
何か記憶に残っています。


この頃は踊りがわからず、戸惑っている気持ちが
よく出ている。今もわからないことだらけだが(笑)
変化や振りの面白さを楽しんでいる様子。しばらくは
…いやずっとこのような感想が続くかもしれない。


◎当時の記述で回りくどかったり、同じような記述、
接続詞のおかしさがあれば、打ち込みながら訂正して
います。