平成2年12月19日?

十二月大歌舞伎 夜の部 一幕見席
義経千本桜 忠信篇」
川連法眼館の場・同奥庭の場・蔵王堂花矢倉の場
◎S木R三さんと行く。


 猿之助歌舞伎は、派手で古典作品を現代感覚で仕立てて
しまうのであまり好んでいなかった。
 でも、百聞は一見にしかず、こう実際見てみると、早替りが
あり、宙乗りがあり、スピード感あふれる大立回りがあって、
視覚的に飽きさせない。
 歌舞伎の立回りは拍子でゆっくり打ってスローモーション的な
穏やかな喧嘩や刀の振り方が多い。猿之助の立回りはドタバタで
テレビで見る時代劇のように激しい。私たちは実際そのような
立回りを見ているから、なおさらスピード感あって迫力があった。
また梯子や山門上での立回りは大部屋の役者さんがスリルある
アクションで私たちに度肝をぬかせる。
 宙乗りはテレビで見たことはあったが、実際見ると、仕掛け
から何から実物は違う。普段花道しか役者さんと観客の交流は
ないが、宙乗りは私たち一幕見席まで役者さんと接することが
できる。また猿之助の視線が私たちの方へ向いていてサービスを
ふりまいているのが効果的。
 早替りは藤十郎の「お染の五役」で見たが、これ以上に妙に
スピーディに感じた。忠信から狐へ、狐から忠信へそして狐へと
視覚的に飽きさせない。藤十郎のは穏やかさを感じさせられたが、
猿之助はスピーディと言うか、「あっ」っていう間もなくサッと
替わってしまう。はあ〜と関心させられた。
 猿之助はマスコミ等で見ると変わっているとイメージがあって、
好めない役者さんであったが、常に観客ニーズに応え、新鮮さを
感じるが、ワンパターンも感じる。立役としては器量といい、
他に比べ一級といえる。
 雀右衛門は年を感じさせず綺麗。
 段四郎猿之助と相対する敵役であるが、隈取りとか憎らしく
感じさせる中で男らしさや哀愁が漂う。猿之助とうまい対比で
ある。
 小米から八代目を継いだ市川門之助、父七代目に似て凛々しい。
 右近や信二郎ほか見てみたかったがチョイ役で物足りず。
 猿之助歌舞伎を見て、歌舞伎の醍醐味を感じたのと、猿之助
バカにはできないと思い知らされました。


(回顧)


 ”初猿之助”であった。
 当時書籍など読んでいて、先入観からあまり猿之助を好んで
いなかったらしい。見たこともないのに、今もそうだがよく見ず
聞かず確かめず…勝手に思いこんだり、怒っていたりする性は
この頃からあったようだ…未だ直せず反省。
 この頃あとぐらいは、古典を見つつ、たまに猿之助さんを見て、
歌舞伎を別の色で見る形で劇場に足を運ぶことになる。
社会人になって、猿之助さんの凄さに圧倒される時期がやがて
くる。それは書き込みながら振り返っていきたい。
 初めては当たり役「狐忠信」…今病気療養中で見られないのが
寂しく思う昨今である。
 急逝した七代目門之助より、八代目を襲名した現門之助。
当時各々の準備が多い襲名興行で、スピード襲名とはやしたて
られたのを覚えている。最近お父様に益々似てきました。
 先月も一緒に行ったSくん、授業の合間で「今度何見たい」
なんて話しをしていて、急遽決まって大学から夕方歌舞伎座
直行したこと思い出す。宙乗りにめちゃくちゃ反応していた
と思います。