平成13年3月15日(金)

三月大歌舞伎 昼の部 歌舞伎座 3階B席

一.相生獅子〜二.女鳴神(途中から見る)

三.お江戸みやげ

お辻…芝翫 おゆう…宗十郎 栄紫…勘九郎
お紺…児太郎 文字辰…藤十郎 ほか

 堅物の行商のおばさんが役者を助ける人情ばなし。
 原作の川口松太郎七回忌のためか、上演されたらしい又、
かつて勘三郎のお辻、勘弥のおゆうというコンビでやったこと
もあり、勘弥追善の意味もあるようだ。
 今回は芝翫宗十郎のコンビで。堅物のお辻は芝翫にぴったり。
堅さの中の時々見せるコミカルさが珍しい。特に栄紫のために、
稼いだお金を出すかどうか悩むところは堅物と思いやりがオーバー
ラップする。荷物を持つ姿がどこかおかしく、白塗りでない芝翫
志村けんのおばあさん姿にも似ている。(ちょっとイヤ)
 宗十郎のおゆうは、開口一番の「ああ、くたびれたあ〜」という
台詞から待ってました!って感じ。相変わらずの愛嬌ぶりで笑わせて
くれる。表情豊かで、茶屋で正座をしてお酒を飲む姿は近所のおばさん
顔負けで、どこでもいそうなおばさんそのもの。お辻と栄紫の逢瀬を
隣り部屋で待っていて、床が敷いてあることに驚くところや、お辻が
稼いだお金を出そうとして、おゆうが止めようとして突き飛ばされる
姿、栄紫の恋人お紺の手を引っ張っていくときの「黙ってきなさい」
や、お辻が栄紫から片袖をもらい、「ちきしょう」とやきもち焼く
ところなどこの人らしい雰囲気がある。芝翫を盛り立てている感じ。
 勘九郎の栄紫は役者らしく柔らか味あり、児太郎のお紺は町娘らしい
やんちゃぶりがある。芝翫宗十郎勘九郎・児太郎と対照的。藤十郎
文字辰は白塗りの表情からして憎らしくキツく面白い。
 キャラクターがはっきりしていて、ほのぼのとした芝居。ゆっくり
お茶を飲んでいるようなホッとすっきりさせられる感じ。
 芝翫宗十郎コンビで再度見たい、勘九郎のお辻、八十助のおゆうでも
見てみたい。


四.十四世守田勘弥十七回忌追善狂言「其小唄夢廓」

小紫…玉三郎 権八勘九郎 三浦屋女房…雀右衛門 
禿…七之助 米津…左団次代役 十蔵 大塚…仲蔵ほか

 権八小紫が繰り広げる清元をバックに奏でる悲恋もの。
 清元がわからないとあまり理解できないストーリーかも。
展開がテンポ良く、権八が徐々に追い詰められていく姿が
スリリングに描かれ、権八と小紫の逢瀬が薄幸という雰囲気が
伝わってくる。清元の節をもっと知りたいと思った。
 勘九郎初役の権八は前髪が似合い、美少年という感じ。馬に
乗って運ばれてくる姿や立腹するところ、小紫との逢瀬は印象深い。
 玉三郎の小紫は女性的で、すごくキレイだった。権八に突き
飛ばされて落胆する姿は心情がでてホントかわいそう。
 この二人の姿、薄幸と感じずにいられず、観ている側は幸せに
してあげたいと思うほど。
 雀右衛門の三浦屋女房がつきあい、玉三郎二人で追善口上。
「夢のようだ」と勘弥を偲ぶ玉三郎の言葉が印象に残る。勘弥は
この権八を演じた後亡くなったという。
 勘弥はどういう役者だったかはわからないが、十五世羽左衛門
生き写しと言われそうで、権八のような色男ぶりもうまかったと思う。
 この芝居、キレイな絵画を見ているようでうっとりしてしまった。


(回顧)

 実は孝夫さんの助六の舞台写真を買い忘れ、せっかくだから
行ってみた。だから途中入場なのである。
 「お江戸みやげ」はホント偶然見た人情ばなし。宗十郎さんに釘付け。
 「其小唄夢廓」は、その後、権八が処刑されるのを会いに来る小紫を
描く(実は夢)通称「権上」は何回か見るのだが、権八小紫の逢瀬を描く
「権下」はこれ以降見たことがない。出たことがない。今思うと玉三郎
さんと勘九郎さんで貴重だ。この芸談は書籍「勘九郎芝居ばなし」で
見ることができる。
 厳しい役人役だった仲蔵さんはもういないし、禿の七之助さんはまだ
幼かった。