平成3年6月21日

歌舞伎鑑賞教室
解説・歌舞伎のみかた
歌舞伎十八番之内 毛抜
国立劇場 1階最後方列にて

粂寺弾正…団十郎 八剣玄蕃…彦三郎
秦民部…団蔵 万兵衛…鶴蔵 秦秀太郎…右之助
巻絹…萬次郎 錦の前…芝雀 ほか


 昨年9月、同じ団十郎で見たが、このときにわからなかった
万兵衛の出や、弾正がなぜやってきたのかなど理解できた。
9月は三階だったので、今回1階後列で、最後の弾正が春道から
戴いた刀を担いで、「やっとことっちゃうんとこな」と叫んで
去っていく姿が見れたのは感無量でした。悠々と去っていく姿は
スカーッとさせ、気分がよい。
 団十郎の弾正は前回に比べ、愛嬌があって楽しい。秀太郎
巻絹にふられる辺りなんかは2度目ですが飽きない。玄蕃との
やりとりも「そうでございますかぁ」などの台詞はやんちゃさや
ひぬくれがあって面白い。弾正の人柄が伝わってくる又、力強い
頼れるところもある。
 その新聞評も、彦三郎の玄蕃と団蔵の民部の役は逆とあったが、
彦三郎も団蔵も玄蕃は合っていて、民部ができる方がいないのでは
と感じた。彦三郎も加賀見山の蟹江一角など悪役らしからぬ役柄も
あったが、今回の玄蕃は悪くなかったと思う。民部だったら、
出番も台詞も少ないので、教室という場ではもったいないと思う。
役が合う合わないでなく、理屈抜きで芝居が見たいものだ。特に
十八番物ってそうであろう。鶴蔵の万兵衛は懸命であるが地味で
やや気の毒。
 団十郎の弾正だけ大きく、脇役が役違いや貫禄不足で脇の少なさ、
足りなさを感じた舞台でもあった。


 序幕の「解説」は、歌舞伎を見続けてきた自分として関心多く、
知識の少なさに頭をかく。十蔵の説明はわかりやすく、着物袴姿
でありながら、スッポンや花道の引っ込みなど真面目にやっていて
楽しい。


 会場で見ている学生たちの反応は、巻絹の「びびびびびぃ」の
台詞にウケていたり、大向こうに驚いていたり、笑っていたり、
関心あるなかれ、楽しんでいるところも伺えるが、寝ていたり
(先生も)、「つまんない」「見たくない」と先入観で言う声など
聞こえたり、マナーの悪さを見ると、うんざりした。
 学生も義務できているから仕方はないのですが…しばし鑑賞教室は
来たくないと思った。


(回顧)

 友人を連れて、平日の当日券で観劇をする。
 今まで席について、上演される演目をひたすら見るまま、
感じるままに見てきたが、教室ということで「解説」を聞き、
歌舞伎の舞台機構や役柄、下座や語り、役柄などの演出など
本やビデオでしか知らなかった世界をナマで感じることが
できたことが収穫でした。
 さすが学生の言動行動は興味の範囲がありますから、興冷め
してしまうのは仕方ないが、学生はともかくも指導する立場の
先生方が寝たりしてしまうのは…どうか、予算もあるのですから、
連れて行く方も付いていく方も行動やマナーにはある程度心得が
必要なのかと思います。
 会社の方で、学生の頃同様の教室を観劇したところ、自分は
2階か三階席で同じ見ているのにおかしいと言われている方が
いました。一理ありますね。
 見る方もそうですが、見せる劇場側も演目や役者など選択も
もっと重視した方が良いと思います。なかなか歌舞伎って、
面白いんだというインパクトある短い演目って難しいと思いますが。
 舞台ばかり見ている者のエゴみたいなことを書いてしまいましたが…