平成3年7月26日

市川猿之助 七月大歌舞伎 昼の部(幕見)
歌舞伎座 一幕見席
「澤瀉十種の内 浮世風呂
三助政吉…猿之助  なめくじ…春猿


 風呂炊きの男となめくじの舞踊。
 就職活動で面接を受けやきもきしているとき、何気なく
見てしまったもので、普段活劇多い猿之助としては、一風
変わった舞踊だった。訳もわからず見ていたが、やきもき
している自分は何かホッとさせられた。
 猿之助の政吉は姿(半纏に褌)から涼しく感じさせ、片足で
バランスをとったり、普段の風呂炊き姿など踊ったり滑稽。
 そんな中、春猿のなめくじが出てくる。テレビで見た三津五郎
舞踊の蛸や、橋之助の舞踊のコチのようなぬいぐるみのグロテスクさ
を予想させたが、白塗りの女形の格好した姿で出てくるでないか。
それも着物の柄には「なめくじ」と書いてあり、鬘には目らしい2本の
角のような物がついている。笑也に継ぐ二番手である春猿のことは
聞いていたが、実際見るとホント綺麗だった。政吉とそのなめくじ
との絡みは奇妙でおかしく、最後に政吉に塩をかけられ逃げていく姿は
かわいそうな気もする。
 大詰め、桶を持った刺青した男達が政吉と立ち回りをする。政吉が
見得を切り幕。この立ち回りがどうして?なんで?と思ってしまい、
猿之助の踊りをもっと見たい!”と思った矢先、お得意の立ち回り
だったのでやや興冷めしてしまった。せめて静かに見たいものだ。
そうであっても、猿之助の舞踊が見たいと思う自分であった。
 今回の「浮世風呂」は夏らしい夕涼みぽい感じで良かった。


(回顧)

 猿之助では初めての舞踊。
 20〜30分くらいの舞踊であるが、妙にインパクトあった。
この頃の感想文は、舞踊はわからないという記述が多いが、この
浮世風呂」は楽しくて舞踊の楽しさが少しでもわかった感じがした。
 就職活動中に芝居とはやや不謹慎な感じもするが、芝居でも見ないと
やっていけない!って切羽詰まっていたのでしょう。面接会場が京橋で
テクテク歩いていたら、歌舞伎座の前に来ちゃった感じだったのかも
しれませんが…(作為的な思いもあったかも)
 今でも仕事がテンパっても、チケットおさえた舞台はどんなことも
あっても足を運んでいるし…懲りない奴です。
 ちなみに、このときの演目は、昼は「お染の七役」ほか、夜は
「加賀見山再岩藤」でした。