平成4年2月18日

平成4年2月18日(火)


市川猿之助歌舞伎公演
猿之助十八番の内 獨道中五十三驛(Aプロ)
グリーンホール相模大野 13時半開演 1階席


丹波与八郎…右近 重の井姫…笑也
水右衛門…段四郎 お三実は猫の怪…歌六
民部之助…信二郎 奴逸平…門之助
弥次郎兵衛…弥十郎 北八…猿弥
十二役早替わり…猿之助


 お家乗っ取りをたくらむ水右衛門一派が家宝を奪い
京から江戸へ向かう。命を受けた与八郎らは追う。
途中、化け猫が現れたり、早替わりといった趣向に
やじさんきたさんも絡み、与八郎らは東海道をばく進する!

 とにかく理屈抜きで楽しめる芝居だった。東海道を本当に
あっという間にばく進するのである。例えば、与八郎、
水右衛門、やじさんきたさん、逸平らによる家宝詮議を
めぐるだんまりからテンポよく駆け足で善悪入りまみれて
追っかけながら舞台背景が変わっていく演出や、早替わりを
使って役が変わるごとに所が変わるという趣向そして与八郎が
海を泳ぎながら(シンクロなどやってくれる)泳ぎ着いたり
(えっ、こんなに泳いだの?と思わせる)息もつかせぬ
スピード感にあふれる芝居だ。
 与八郎はAプロは右近、Bプロは信二郎ダブルキャスト
右近の主役は見てみたかったので期待通り。若さあって、
きりっとして格好いい。
 驚いたのは歌六の猫の怪である。立役のイメージが強いが
口跡といい、雰囲気の異様さといいびっくりした。
 猿之助の十二役早替わりは土手の道哲が小気味よく
かわいらしく印象深い。弁天小僧が痛快で気分がいい。
早替わりしながら変わる場所が藤沢、小田原、戸塚、保土ヶ谷
など相模原の近くで興味深く見られた。長吉・お半・お絹の
衣装が先日見た「お染の七役」の久松・お染・お光のものと
同じだった。
 笑也の美しさ、弥十郎・猿弥の息ぴったりのコンビ、
門之助の豪快さ、信二郎の清楚さ、芝居を締める段四郎ほか
猿四郎のおくら、春猿のおそで、欣弥の官太夫、冠十郎の
赤星十三郎と一座奮闘の舞台だった。


十二役早替わり:Aプロ 猿之助 Bプロ 右近
猫の怪: Aプロ 歌六 Bプロ 猿之助
丹波与八郎: Aプロ 右近 Bプロ 信二郎 
 

(所感)


 この時、ホールでバイトをしていて、本来はBプロを
観る予定だったがバイト都合でAプロを観ることになる。
右近さんでの主演を観たのは初めて。
 夜のバイトでは楽屋を拝見することができ、姿見で
かつらをチェックする信二郎さん、本当に背が高かった
弥十郎さん、階段ですれ違う右近さんに会釈したら
微笑んでくれたり(勘違いか)また、片づけをしていると
段四郎さんが支度していているお姿を見かけたり、多分
段治郎さんや春猿さんが食べたと思われる店屋物の丼を
洗ったりと、間近で見る歌舞伎役者は本当格好いいと
感じた時だった。


 猿之助さん一座が定期的な地方巡業を開始して2年目。
1年目は千本桜・忠信編を持ってきた。2年目は今回の
五十三驛と年1回行っている。
 このホールの企画責任者が門閥外を抜擢するおもだか
一門に感銘を受け、地元に呼んだらしい。またこの方に
歌舞伎以外でも音楽座など様々な舞台を教えて戴いた
観劇の恩師でもある。
 また信二郎さんこと現錦之助さん、弥十郎さん、
歌六さんとまだ猿之助一座に属していたころだ。
当時のチラシには亡くなられた猿十郎さんのお写真も
載っている。
 猿之助歌舞伎は、このころは狐忠信しか観たことが
なかったので、このような機会は有難かったと思う。
今後は猿之助さんの通し狂言を片っ端から観ていく
ことになる。
特にバイトで楽屋裏を拝見できたのは貴重な体験
でした。