再三の作成へ…どこまで続くか(2020(令和2)年4月25日)

平成から令和へと元号変わって1年経とうとしている。

しかし世の中、今年初めから中国武漢を発生と思われる

新型コロナウィルス感染拡大防止に伴い、3月からほとんど

の劇場・寄席・ライブが公演中止か延期となってしまった。

 

野田秀樹さんは劇場の死と嘆き、様々な舞台人が戸惑いを隠せない

状況下に陥ってしまった。私も一サラリーマンとして、在宅勤務や

時差出勤など別の意味で働き方改革が浸透せざる状況となっている。

かつては、週末、仕事終わりに何かしら観に行っていた習慣がなくなって

しまった。芝居の本を読むと、行きたくなってしまう衝動にかられることも

あって読まないようにしている。禁断症状を解消するため(笑)聞いてない

落語のCDで気を紛らわしたり、幸いの慰めの無料配信を見たりしている。

でも、一番つらいのは舞台で輝きを放つ役者たちである。その方々の事を

考えれば観劇趣味は我慢しなければならない。

 

どこまで続けられるか、わからないし、自信はもてないが、久しぶりに

このブログを広げてみた。なんかフォーマット変わっている、忘れがちな

パスワードを何度かこれかと繰り返し「記事を書く」に入ることができた。

誰がご覧戴いているのかわかりもしないが、前にもお詫びをしているが改めて

できる範囲で記述をすることを思いついた。

現記述状態で、平成4年3月の歌舞伎座…28年分書き溜めている。

 

さあ、どこまで進められるか、やってみよう。

再びお付き合い願いたい。よろしくお願いします。

 

 

 

平成4年3月26日

平成4(1992)年3月26日
歌舞伎座 3階B席 わ‐9

河竹黙阿弥歿後百年記念
黙阿弥祭三月大歌舞伎 夜の部


一.新歌舞伎十八番の内 高時

高時…団十郎 衣笠…松江
安達三郎…友右衛門 秋田入道…団蔵
大仏陸奥守…彦三郎 長崎次郎…十蔵ほか


 高時が天狗に惑わされるところはユニークで
で面白い。例えば、天狗と一緒にラインダンスの
ような踊りをするとか、天狗と向かい合って踊る
とか、手足をつかまれて天狗にぐるぐる回されたり
宙づりされたりするところである。ちょっと
ミュージカルぽくて異質に感じたが楽しく見れた。
 活歴物というが、それがどういうものかはっきり
しないし、芝居自体が暗い。少し眠くなった。
 松江の衣笠が綺麗、友右衛門の安達は正義感
あって格好いい、十蔵の長崎は憎らしく、彦三郎の
大仏はなだめられツンとして去っていく姿がお父さん
似。


二.盲長屋梅加賀鳶
本郷木戸勢揃いから赤門捕物まで

道玄・梅吉…富十郎 松蔵…団十郎 お兼…田之助
加賀鳶…勘九郎辰之助、彦三郎、染五郎、友右衛門、
団蔵、智太郎、松助、右之助、秀調ほか
おせつ…東蔵 おあさ…浩太郎 伊勢屋…吉五郎ほか


 道玄という人物は殺しもするけど、なぜか憎めない。
同じ黙阿弥の河内山にも類似するが、金のために人助け
するわけでない。
 富十郎の道玄はしゃがれた声や、ゆすりのとき、横に
なって駄々をこねたり、ラストは捕り手から図太く逃げる
ところなど面白い。
 相対する団十郎の松蔵は頭という感じで格好いい。道玄
のゆすりで使った文を買うところや伊勢屋にお金を与える
ところは江戸っ子の粋があって感じ良かった。
 田之助のお兼はオバタリアンのごとく図太く、調子の良さ
は面白く見れた。東蔵のおせつはかわいそうな感じ。勘九郎
以下加賀鳶はどこからこんなに役者を集めたと思うくらい。
掛け声など耳に残る。
 道玄のストーリーは陰湿で暗いので、最初ににぎやかな
場面を取り入れての芝居の流れだが、ややとっつきにくく。
 芝居作りや鳶、道玄そして当時の生活感と黙阿弥の作風を
満喫した。


三.連獅子
狂言師右近のちに親獅子の精…勘九郎
狂言師左近のちに子獅子の精…勘太郎
僧…智太郎、浩太郎


 勘九郎親子の「連獅子」、誰もが"待っていました!"という
感覚であろう。自分も小声で「待ってました」とつぶやいた。
客席から大拍手と皆が喜んでいる様子だった。
 踊りはよくわからないが、子を谷に落とし、這い上がる様子は
感じられた。這い上がってきた時の勘九郎の親の微笑む表情は
この方の人柄が出て良かった。獅子になってからは、子獅子を
見守る構えや、国立劇場にある六代目菊五郎の獅子の姿と同じで
勇ましい。勘太郎もかわいらしく、中村屋の安泰を祈った。
 3月上旬に、卒業旅行でフランスに滞在したとき、勘九郎親子
の連獅子写真があって、"ああ、見たいなあ"と募る想いだったので
感無量であった。この黙阿弥祭を興行される際、この親子でやる
かもと予想したくらいである。連獅子開演前は幕が開くまでドキドキ
興奮した。


 2か月にわたって、黙阿弥の演目にふれて、ゆすりなど展開が
パターン化されているが、痛快でおかしく又、綺麗で踊りもあって
バラエティに富んでいる。これからも、いろんな役者で見ていきたい。
「連獅子」は興奮し、「加賀鳶」は粋と道玄の人柄、「高時」の
ミュージカルぽさと様々であった。「髪結新三」が見れなかったのが
悔しい。
 2か月にわたってのベスト3は、「連獅子」、「御所五郎蔵」、
三人吉三」である。


(所感)

 勘九郎親子の「連獅子」は初見とあって、開演前から今か今かと
興奮しながら幕開きを待っていたのを今でも覚えている。
 三代目松緑から譲り受けた富十郎の道玄、新歌舞伎十八番
高時も印象深い。富十郎田之助というコンビもなかなかだ。
 昼はお静礼三、雁金、髪結新三。

[*歌舞伎]

平成4年2月20日

平成4年2月20日(木)


河竹黙阿弥歿後百年記念
黙阿弥祭 二月大歌舞伎 夜の部
歌舞伎座 17時開演 3階B席


一、慶安太平記 丸橋忠弥
丸橋忠弥…団十郎 松平伊豆守…菊五郎
藤四郎…権十郎  せつ…田之助ほか


幕府転覆を図る由比正雪一派の一人である
丸橋忠弥の顛末を描いたもの。
江戸城お堀の深さを小石を投げて測るところが
見もの。
珍しい作品とのこと。
世話物を目にする黙阿弥がこのような時代物に
近い演目を書いていたことに驚く。小学生のころ、
漫画「日本の歴史」で読んだ「由比正雪の乱」での
ひとコマで忠弥の姿を見たことがあったのを
思い出す。忠弥、藤四郎、さが、せつと登場人物
がイキイキとして、忠弥をめぐって複雑な心境に
かられ悲劇につながっていく展開で息もつかせず。
 お堀の深さを測る場面は、石を投げて、黒御簾
の大太鼓ドロドロ〜という音と忠弥のまなざしが
良かった。団十郎菊五郎が並ぶところは絵に
なるよう。
 大詰めの忠弥の大捕物は猿之助歌舞伎並みの
大殺陣でびっくり、団十郎大奮闘の大芝居だった。
 謀反の企みを伝えるかを複雑な心境を伝える
権十郎の藤四郎、哀れさ出ている田之助のせつと
菊蔵のさがが印象的。


二、三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場
お嬢吉三…梅幸
和尚吉三…羽左衛門
お坊吉三…団十郎

「月もおぼろに白魚の…こいつはぁ春から縁起が
ええわえ」の名セリフに、吉三とついた3人の
泥棒が出会う場面。
 梅幸羽左衛門団十郎という顔合わせ。梅幸
羽左衛門はこのようなお役はされないので貴重な
舞台を見たような気がした。まさに黙阿弥祭りだ。
 梅幸のお嬢吉三はお坊に問い詰められて男から女
への変わり身の自然さ、かわいらしさに驚かされる。
この方で「こいつはぁ春から縁起がええわえ」が
聞けたのも最高の気分でした。
 羽左衛門の和尚吉三はお嬢とお坊の喧嘩の種である
百両の金を「じゃあ預かっておこう」とあっさり受け
入れてしまう調子の良さが自然と愛嬌ある。
 団十郎さんのお坊吉三がこの二人に囲まれての活躍
ぶり。白塗りが似合うお坊ちゃんそのもの。
 物語はこれからの名場面。名セリフから黙阿弥を
知って偲ぶよう。


三、曽我綉侠御所染 御所五郎蔵
御所五郎蔵…菊五郎 星影土右衛門…権十郎
皐月…宗十郎 逢州…松江 甲屋…三津五郎


 背景はお家騒動、かつて同じ家臣だった
五郎蔵と土右衛門が吉原で出会う。土右衛門は
五郎蔵の女房で吉原に勤める皐月に横恋慕。
五郎蔵がお金用立てで困っているところを
皐月が土右衛門からお金を借りて嘘の愛想尽かし
をするが…
 「籠釣瓶」「伊勢音頭」「八幡祭」「お祭り佐七」
と縁切物を見てきたが、主人公がこれほどカッとして
復讐を胸に去っていく姿とヒロインの悲しさがひしひし
と伝わってきたのは初めての演目。五郎蔵が今まで姿
といい、心情といい、皐月という女といい、何も不自由
がなかったという男が堕ちていく姿が哀れであった。
息もつかせない展開と登場人物がはっきりと描かれ、
黙阿弥の力を見せつけられた演目であった。好きな芝居
となった、これからも様々な五郎蔵役者を見ていきたい。
 終始「格好いい」とつぶやいてしまった菊五郎さんの
五郎蔵。姿といい、気風の良さといい、怒りといった
気質といい、終始目が離せず本当格好いいの一言に尽き
感激しっぱなしだった。特に縁切りの場面でベンチに
足を置いて皐月に迫るところや、尺八をふりあげて皐月
に迫り、逢州に止められ、力抜ける仕草は印象的。
土右衛門と再会する場面での龍を描いた衣装や高下駄の
音が忘れられない。
 権十郎の土右衛門は憎らしく、五郎蔵との対峙は貫禄
十分で土右衛門も格好いい。宗十郎の皐月は華やかながら
悲しさと哀れさがある。松江の逢州は品と色気あり、
五郎蔵を制止する姿が印象深い。三津五郎の甲屋は菊五郎
権十郎の間に入る抑えぶりが大きい。調子良くおかしみ
ある鶴蔵の吾助、いるだけで格好いい正之助、十蔵、亀蔵
玉太郎の五郎蔵子分、縁切で五郎蔵をあざ笑う菊十郎、寿鴻、
松太郎、権一の土右衛門門弟も記憶に残る。
 菊五郎の五郎蔵が光る大舞台だった。


 三演目とも、とても痛快で気分良い一夜だった。黙阿弥も
観客が気分良くなれるようにニーズに応えていたのだろう。


(所感)


 平成4年2〜3月は黙阿弥歿後百年として黙阿弥の演目が
揃う。また、この年は黙阿弥の演目が毎月と上演された。
河竹黙阿弥という劇作家を知る良い年となったと思う。
現在上演される芝居や舞踊はほとんど黙阿弥作で、台本から
近代の歌舞伎の礎を築いた方でもある。
 当時の文章でもわかるが、菊五郎さんの御所五郎蔵が
興奮するぐらい格好良かったのだ。初役は名古屋御園座
で待ちわびた上演でもあったと思い出す。
 今亡き梅幸さんや羽左衛門さんのお嬢と和尚も拝見できた
のも貴重だ。
 昼の部は、菊五郎さんの弁天小僧、団十郎さんの南郷ほか
での「白浪五人男」の通しと、団十郎さんの更科姫と菊五郎
さんの維茂で「紅葉狩」。この時の夜の部の開演17時から。

平成4年2月18日

平成4年2月18日(火)


市川猿之助歌舞伎公演
猿之助十八番の内 獨道中五十三驛(Aプロ)
グリーンホール相模大野 13時半開演 1階席


丹波与八郎…右近 重の井姫…笑也
水右衛門…段四郎 お三実は猫の怪…歌六
民部之助…信二郎 奴逸平…門之助
弥次郎兵衛…弥十郎 北八…猿弥
十二役早替わり…猿之助


 お家乗っ取りをたくらむ水右衛門一派が家宝を奪い
京から江戸へ向かう。命を受けた与八郎らは追う。
途中、化け猫が現れたり、早替わりといった趣向に
やじさんきたさんも絡み、与八郎らは東海道をばく進する!

 とにかく理屈抜きで楽しめる芝居だった。東海道を本当に
あっという間にばく進するのである。例えば、与八郎、
水右衛門、やじさんきたさん、逸平らによる家宝詮議を
めぐるだんまりからテンポよく駆け足で善悪入りまみれて
追っかけながら舞台背景が変わっていく演出や、早替わりを
使って役が変わるごとに所が変わるという趣向そして与八郎が
海を泳ぎながら(シンクロなどやってくれる)泳ぎ着いたり
(えっ、こんなに泳いだの?と思わせる)息もつかせぬ
スピード感にあふれる芝居だ。
 与八郎はAプロは右近、Bプロは信二郎ダブルキャスト
右近の主役は見てみたかったので期待通り。若さあって、
きりっとして格好いい。
 驚いたのは歌六の猫の怪である。立役のイメージが強いが
口跡といい、雰囲気の異様さといいびっくりした。
 猿之助の十二役早替わりは土手の道哲が小気味よく
かわいらしく印象深い。弁天小僧が痛快で気分がいい。
早替わりしながら変わる場所が藤沢、小田原、戸塚、保土ヶ谷
など相模原の近くで興味深く見られた。長吉・お半・お絹の
衣装が先日見た「お染の七役」の久松・お染・お光のものと
同じだった。
 笑也の美しさ、弥十郎・猿弥の息ぴったりのコンビ、
門之助の豪快さ、信二郎の清楚さ、芝居を締める段四郎ほか
猿四郎のおくら、春猿のおそで、欣弥の官太夫、冠十郎の
赤星十三郎と一座奮闘の舞台だった。


十二役早替わり:Aプロ 猿之助 Bプロ 右近
猫の怪: Aプロ 歌六 Bプロ 猿之助
丹波与八郎: Aプロ 右近 Bプロ 信二郎 
 

(所感)


 この時、ホールでバイトをしていて、本来はBプロを
観る予定だったがバイト都合でAプロを観ることになる。
右近さんでの主演を観たのは初めて。
 夜のバイトでは楽屋を拝見することができ、姿見で
かつらをチェックする信二郎さん、本当に背が高かった
弥十郎さん、階段ですれ違う右近さんに会釈したら
微笑んでくれたり(勘違いか)また、片づけをしていると
段四郎さんが支度していているお姿を見かけたり、多分
段治郎さんや春猿さんが食べたと思われる店屋物の丼を
洗ったりと、間近で見る歌舞伎役者は本当格好いいと
感じた時だった。


 猿之助さん一座が定期的な地方巡業を開始して2年目。
1年目は千本桜・忠信編を持ってきた。2年目は今回の
五十三驛と年1回行っている。
 このホールの企画責任者が門閥外を抜擢するおもだか
一門に感銘を受け、地元に呼んだらしい。またこの方に
歌舞伎以外でも音楽座など様々な舞台を教えて戴いた
観劇の恩師でもある。
 また信二郎さんこと現錦之助さん、弥十郎さん、
歌六さんとまだ猿之助一座に属していたころだ。
当時のチラシには亡くなられた猿十郎さんのお写真も
載っている。
 猿之助歌舞伎は、このころは狐忠信しか観たことが
なかったので、このような機会は有難かったと思う。
今後は猿之助さんの通し狂言を片っ端から観ていく
ことになる。
特にバイトで楽屋裏を拝見できたのは貴重な体験
でした。